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食べる[特集]

加賀山代温泉「惣八 六方焼」

加賀温泉郷に根差し、長く愛されるべき加賀温泉郷の食文化を、「旅・まち」スタッフの独断と偏見でお伝えする特集企画「加賀食のススメ」第一弾は、山代温泉に六代続く老舗「御菓子司 惣八」の「六方焼」をご紹介いたします。


 

加賀温泉郷に根差し、長く愛されるべき加賀温泉郷の食文化を、「旅・まち」スタッフの独断と偏見でお伝えする特集企画「加賀食のススメ」第一弾は、山代温泉に六代続く老舗「御菓子司 惣八」の「六方焼」をご紹介いたします。

こころを元気にする食べ物は、やはり『あまいもん』

つらい時、疲れたとき、失恋したとき(…え、余計なお世話?)、甘いものを食べて落ち着いたことはありませんか?
奈良時代、日本に砂糖が伝来した当時、薬としてもてはやされたことを知る人は多くないかもしれないが、糖が頭に良いことは皆さんご存知だろう。

…と、難しい話はともかくとして、

皆さんに知ってほしいのは、体に良い「スィーツ」は頭にはもっと良いということ。
それが美味しければ、「こころにも良い」ということだ。

『六方焼』

六方焼とは、「餡のまわりに小麦粉と卵で作った生地を付けて焼いた饅頭である。生地の六面を焼き上げ、外観が直方体になっていることからこの名前が付けられた。石川県・福井県をはじめとする北陸、近畿を中心に、全国で製造されている。」

 

一般的には、こう紹介されている。
つまり見た目、直方体の焼き饅頭であり、各地方それぞれでの認知度はともかくとして、全国各地で製造されているということ。
しかし、『六方焼』を語るならば、先ず山代温泉の『惣八』に行くべきだと、強く推したい。

山代温泉 『惣八』

JR北陸本線「加賀温泉駅」から、大きな観音像を背に、車で15分ほど走ると、山代温泉の共同浴場「総湯(そうゆ)」を中心に旅館や商店が立ち並ぶ「湯の曲輪(がわ)」に辿り着く。
明治期の共同浴場を再現した「古総湯(こそうゆ)」(写真1)の周りを、風呂上がりの人がくつろぎ、観光客が散策する様子は、さながら100年以上昔の宿場町の風情を思わせた。
都市の喧騒に慣れている人の目には、一種、頽廃的にも映るだろうが、そこはやはり「温泉場」の熱気、情緒と言える。

「道番屋」の看板(写真2)が掛かる店に入り、
「『惣八』はどこですか?」
と道を尋ねると、
「あの紅殻格子(べんがらこうし)の建物の向こうにある細い路地を右に入ってすぐのところにありますよ」。
店員であろうかその男性は、「古総湯」のその先にある朱色の建物の、またその先にある路地を指さしながら、気さくに答えてくれた。言われたとおりに石畳の道を進み、「古総湯」を抜け、共同浴場・「総湯」の道向かいにある路地を進んで間もなく蜂蜜の甘い香りがしてくる。
そこに、文政年間(西暦1820頃)創業の老舗「惣八」(写真3)があった。

 

店内に入り、焼き立てを購入。

何とも言えない甘く芳ばしい香りに思わず吸い込まれ、人目も憚らずカブりついた。

 

さっくり…。

 

ほっこり…。

 

ほわっ…。

口に入れた時の感覚は、自分が想像した味を不思議なほど裏切らない。

その瞬間、何故か顔がほころんでしまった。

行儀が良いとは言えないが、焼き立ての「六方焼」を食べながら湯の曲輪を歩く。

幸せな気分になってしまう。

 

これは発見だ。


(写真1)

明治期の共同浴場を再現した「古総湯(こそうゆ)」

「道番屋」看板(写真2)

「道番屋」の看板がある店では湯の曲輪周辺の案内を聞くことができる。

御菓子司 惣八 店舗前の様子

(写真3)

開店は朝8時。六方焼きを焼いている間、店頭では芳しい香りが漂っている。

 

 

お得意様のこえ 「薬王院保育園」園長 堀井さん

「とにかく大好きですね。お店の前を通ると、香ばしい香りがしてきて、つい買ってしまいますね。焼き立ては特に美味しいですから!
県外の知人にもおみやげとして持って行くことはありますが、評判はいいですよ。
自分で食べるために買うことの方が多いですけど(笑)。」

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『甘い』は『美味い』…だから『六方焼』、だから『惣八』

断じてダジャレではない!(そして担当のセンスでもない!!)
「あまい」とは、本来「じわいがあり、うまいこと」を意味する言葉だった。(※諸説あるうちの一説だが…。)
しかし、大事なのは、ここでいう「あまい」は、「自然で素朴である」ということ。

 

ワケはおいおい語るとして、…だから「六方焼」、だから「惣八」なのである。

 

冒頭に「六方焼きとは餡のまわりに小麦粉と卵で作った生地を付けて焼いた饅頭である。」と書いた。
そして、「惣八」の「六方焼」の生地は卵と蜂蜜の水分だけで練られている。

 

使用する素材には格段のこだわりがある。
米の炊き上がりが、最初に触れる水の良し悪しによって違ってくるように、生地を練る水分もまたソレに準じる。
生地を練る際、最初に触れる水気はやはり、もっとも生地に「馴染む」といえる。

 

卵と蜂蜜の水分だけで練られる「惣八」の生地は、素材の風味も生地に馴染みやすく、焼き上がりは特に芳しい香りと、そのふくよかな風味に舌鼓を打つことになる。
しかし、素材の味がダイレクトに顕れるこの製法は、素材への不信が僅かにでもあれば、
砂糖や香料を過多に加え風味をごまかすことになり、文字通り、くどいほどの「嫌味」になっていたはずだ。
「嫌味」になった味は、次第に飽きられ、廃れてゆく。

 

180余年、「惣八」の味は愛され続けている。
自然で素朴な「あまい」は、素材へのこだわりと、守り続けてきた製法、積み重ねてきた研鑽の賜物と言える。

 

「惣八」の「六方焼」

素材への信頼があるから、無駄なものを加味しない。

「惣八」六代目 藤沢隆昭さん

御菓子司「惣八」6代目店主 藤沢隆昭さん

「味も焼き色も大事。季節や天気によっても焼き上がりが変わってくるから難しいんです。卵にも砂糖にも水分はあって、コレがすごく影響するもんだからこだわりますよ。特に焼き色は卵の質次第。白身をつまんで持ち上げられるくらい新鮮で良いモノじゃないと。」

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「見て」楽しむ。

六方焼を焼く藤沢さんのようす

 

 

店頭では、六方焼きが焼きあがる様子をガラス越しに見ることができる。 惣八の「六方焼」は大判焼きや鯛焼きのように、型に流し込んで焼き上げるものではない。

 

焼きはじめは、熱い鉄板の上に、ありきたりな形をした饅頭が並ぶ。 それが、名人である店主の手に掛かると、六面に程よい焼き目のついた直方体の焼き饅頭があれよあれよと出来上がってゆくのだ。

 

鉄板の上に、まるで麻雀パイのように積まれてゆく様子(っと…失礼。)を見ながら、出来上がりを待つのも楽しみ方の一つだ。

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お得意様のこえ 「高間時計店」高間さん

「幼い頃から当たり前のように食べていたので特別なものではなく、逆に市販のチョコが美味しいと思っていた。
友人が家にあった『六方焼』を美味そうにバクバク食べる様子を見て、改めて美味しさを感じるようになった。
自分自身が好きだから、人にあげたいと思う。
それは昔から変わらない、ここにしかない本物の味だからこそ。」

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「北大路魯山人」も

……口にしたかはともかくとして…(※山代は魯山人が若き日に逗留し、陶芸に目覚めた地でもある)。
「惣八」の「六方焼」は長く、また広く人々に愛される「飽きない味」である。
これまで仰々しく書いてはきたが何のことはない、身構えることもなく、なんとなく摘まんでしまう味であるということ。
お手元にお茶があれば、ついつい進んでしまうこと請け合いである。
(個人的には、「番茶」をお勧めする。)

魯山人寓居跡いろは草庵
当時福田大観と名乗った北大路魯山人が大正4年の秋から約半年間生活した「魯山人寓居跡いろは草庵」。

 

「食」に携わる人間にとっては、もっとも難しい「お題」といえるが、「惣八」には気取る様子も、気負う構えもない。
ただ淡々と積み重ねてきた結果なのだ。
六代に渡り追求し続けた、この「自然で素朴なあまさ」こそ、他の「六方焼」と「惣八」の大きな違いと言えるのではないだろうか。

 

もっとも、食べる側には、関係のない話である。
山代に着いたなら、道すがら会話を楽しみ、匂いに誘われるまま、惣八の前に行き、見て楽しみ、ガッツリと「六方焼」を頬張れば良いと思う。
何も考えず「味」も「空気」も楽しめれば、これ以上幸福な食べ方はない。

 

…注意点があるとすれば、ひとりで食べ過ぎないこと。
「六方焼」を食べ過ぎて、他の山海の美味が食べられたかったなどという苦情は、当方では一切受け付けていない。

 

お得意様のこえ 「たちばな四季亭」若女将 和田さん

「山代の素朴な風情っていうんですかね?私の子供もハマってます(笑)。
自然な甘さで体にもいいので、ときどきお客様にも、お茶請けとしてお出ししています。
藤沢さんご夫婦のお人柄も良くて、安心できますから…。
評判が良くって、次の朝、お店にお買い求めに行かれるお客様もいらっしゃいますよ。」

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山代温泉 「御菓子司 惣八」

  • 住所: 石川県加賀市山代温泉万松園通14 
  • 電話番号: 0761-76-1254
  • FAX: 0761-76-1254
  • 営業時間: 8:00~19:00※火曜日は12時00分まで。
  • 定休日: 水曜日 年末年始 1/1

詳細はコチラからご覧ください。

六方焼きの実演を見ながら、焼き立てを食べたい方は、
午前10時ごろに行くのがオススメ。

「御菓子司 惣八」のご主人 藤沢隆昭さん

「御菓子司 惣八」のご主人 藤沢隆昭さん

「前日に買いに来てくれたお客さんが、次の朝に『美味かったよ』とまた来てくれる。そんな時は本当にうれしいですね」

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