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VOL.29 『川のある風景』 E.M

大聖寺を流れる旧大聖寺川

加賀市の南端、福井県との県境近くに位置する十万石の小さな城下町 大聖寺には「旧大聖寺川」と「熊坂川」という二つの川が流れています。
福井県の方から流れてくる「熊坂川」は大聖寺の「山ノ下神社」から旧大聖寺川に合流する「江沼神社」付近まで桜並木が続いており、加賀市ではお花見をしながら散歩できる地点として有名です。すぐ近くには小学校があり、毎年春になるとこの桜並木の下を小さな新入生たちが緊張した面持ちでくぐる様子が見られます。今は桜の花もとうに散り、青々とした葉が茂り、新入生達も少し慣れてやがて来る夏休みの話なんかしながら元気よく通っています。
私が幼い頃には近所のおばちゃんたちがこの川で赤ん坊のおしめを洗ったりしていたものです。さすがに今は洗濯をする人はいませんが、夏になると腕白小僧が網をもって川に入っている姿を今でも時々みかけます。
その熊坂川が合流する「大日山」を源とする「旧大聖寺川」では、今年の春から毎週日曜日に「百万石ウォーク」のツアーの一環として、小さな舟での川下りが始まりました。川下りといっても大変穏やかな流れの川なので水郷めぐりのような感じです。
大聖寺に生まれ育った私は最初このプランを聞いた時正直言って『えっ、あんな川を?』と思ってしまいました。ハラハラするようなスリル満点の激流を下っていくわけでも、『ほう』とため息がでるような絶景の名所が付近にあるわけでもないからです。でも一度舟に乗る機会を得て考えが変わりました。
「水守神社」というところの船着場から「新橋」を過ぎたところの船着場までの約40分間。残念ながら水位の関係で重要文化財の「長流亭」までは行けませんが素朴な景色がかえって趣を感じさせます。途中にくぐるいくつかの橋。なかにはかなり低い位置にかかっている橋もあり、そこをくぐる時は舟の屋根がつかえないか内心どきどきします。(本当はあらかじめ水位を計っているのでつかえる心配はありません。ご心配なく)そして船着場付近に巣をつくっている鴨の親子。私が舟に乗った時はこの3羽の鴨たちが、舟下りの間中まるで先導するように舟の進みに合わせてゆっくり前を泳ぎ目を楽しませてくれました。また数は多くはありませんが、川沿いには季節により違った花々が咲くのがみられます。6月には花菖蒲やあじさいが見頃でしょう。遊歩道にはのんびり散歩するお年寄りや親子連れ。川岸の家々からはかすかに子供の声が聞こえてきたり、美味しいにおいがただよってきたり。そんな光景を眺めながらの川下りは日常の喧騒をしばらくの間忘れさせてくれます。 
加賀市の中でも周囲の温泉地と違い地味な印象のある大聖寺ですが、有名な観光地巡めぐりを楽しまれた後はこの小さな城下町にも是非一度立ち寄られる事をお奨めします。 

(2006.6)

 

 

【百万石ウォーク】
●『城下町を舟で水景めぐり&古い町並みのなりわい見て歩き』
(ボランティアガイドの解説つき)
◆毎週日曜日 AM.10:00 JR大聖寺駅集合
◆定員 12名 (最少実施人数 3名)
◆所要時間 川下り(約40分)+ 町歩き(約60分)
◆料金 大人(中学生以上)1,200円  子ども(小学生)700円

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