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vol.15 春、来た。「北出不二雄作陶展」始まる。

ここ一週間ほど、日和がいい。ようやく春が来た感じだ。
昨年の暮れまで、まったくの暖冬だったが、年が明けて寒の入りになった途端、ものすごく寒くなった。3月になってからも真冬のように雪がよく降り、三寒四温どころか、四寒一温の日が続いた。おかげで、四月に入っても桜は青く固いつぼみのままで、今年の開花はかなり遅れそうである。
もういい加減にしてくれと思っていた冬だが、ちゃんと春はやって来た。里山の木々はまだ丸裸で、花も咲いてはいないが、日差しがゴロっと変わった。気が付いたら車の中もすぐに温かくなっている。あんなに寒かったのに。

3月27日は恒例の久弥祭。前日の荒れ模様とうってかわり、当日は最高の日になった。
深田久弥と旧交のあった作家の高田宏館長、歌人の清水温子さんをはじめ、久弥を慕い、山を愛する仲間たちが大勢集まった。江沼神社の境内、本をかたどった歌碑に、久弥が好きだったユリを参加者全員が献花した。

4月1日、「北出不二雄作陶展」が始まった。
5月8日まで、会場はJR加賀温泉駅前の加賀アートギャラリー。
個人的な話になるが、北出先生は、私と妻が学生時代、陶芸の教鞭を取っておられた。我々は漆芸に染織と、専攻が違ったので直接ご指導をいただいたわけではないが、当時はまさに雲の上の人であった。加賀に帰ってきてから、山代でふとお目にかかることがあり、それ以来何かとお心をかけていただいた。そのお人柄に触れるごとに、雲上人が身近になっていった。
工芸家は沢山いる。しかし芸術家は少ない。北出先生は、加賀においてただ一人の九谷焼の芸術家であると思う。取材で一度、スケッチブックを拝見した。驚愕の写生力を目の当たりにした記憶がある。同じ場所を二度踏まない、立ち止まらない、技術と表現にあくなき探求と挑戦する姿。
「絵付を離れず」「現代の作家はあくまでも自然の描写に基づいて文様を作るべき。文様から文様を作ってはならない」と語る。
加賀市に寄贈された今回の作品群。半世紀にわたる作品のどの時代をとっても、新しく、かつ九谷の伝統がある。本当に凄い。
ぜひ、加賀市民に、そして多くの人に、先生の「意志」をご覧いただきたいと切に思う。

最後に、展覧会のしおり冒頭、「作陶への想い」と題された先生のご挨拶の一部をご紹介したい。
「・・・それと、旧江沼郡には焼物関係の問屋が殆どなかった。つくったものはデパート等の個展で発表してきた。個展では何十点かの作品すべてが一品制作となるばかりでなく、バラエティに富む必要があった。この様なことが私の制作方法、考え方として、何十年続いてきたのであった。
その上公募展出品上の理由から、九谷風上絵以外に独自の彩釉陶という技法を開拓して作陶を進めて、今日に至っているのである。」

(2005.4 M.O)

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