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vol.32-1 『温泉郷の夏、コマ送りに過ぎて。』

毎年のことだが、夏は過ぎ去るのが早い。春が終わると、早くも冬のことを意識し始めて、雪の季節かまた来るのかと、急に物淋しくなってしまう。

夏は祭りが多い。伝統あるもの、新しいもの、日めくりに各地で行われた。賑やかだった夏の余韻をお届けする。

昨年から始まった「加賀白山おったからまつり」。霊峰白山の雪は、川や伏流水となり、米に酒に姿を変え、森をつくり、千年湧きいずる温泉となり、そして海へと流れて豊かな海の幸を育んできた。加賀白山地域の伝統文化を見つめなおし後世に伝えたいとの願いから、旅館の若手たちが協力し合って始めたもの。今年は山中温泉を舞台に、獅子舞や踊り、太鼓など各地の伝統芸能が繰り広げられた。また、山中漆器と九谷焼など伝統工芸、地酒に柿の葉寿司など郷土の味も販売された。当日は好天に恵まれ山中総湯周辺は夜遅くまで多くの人で賑わった。写真は、小松龍助町大獅子、三百年続く格式が落ち着いた迫力を感じさせる獅子舞である。

9月3には「山中節道中流し」が行われた。日本三大民謡といわれ哀愁を帯びた独特の節回しで知られる山中節。座敷唄であったこの民謡を、湯の町の通りを流しながら多くの人が楽しめる趣向に変えたもので、これも昨年からの取り組み。三味線、胡弓、唄、踊りの100名を超える連が、深夜までゆったりと温泉街を練り歩いた。

夏休みの期間、市内にある山中、山代、片山津の各温泉では、毎晩、商店街のみんなで夜店を出して観光客を楽しませている。とくに山中温泉夏祭りは盛大で、温泉守護の長谷部神社境内を中心に、「ゆげ街道」沿道に夜店が並び、懐かしい射的、わたがし、富くじなどもあり、浴衣姿の観光客で参道はいっぱいだ。

温泉地には、温泉だけではなく天然水がいくつもの場所で湧き出ている。この湧き水を地元では「生水(しょうず)」と呼び、その場所には必ず地蔵尊が祭られている。8月23日、24日は地蔵盆の日。地蔵盆は子供たちの祭りで、生水の前には四畳半ほどの床が作られ、そこに子供たちが集まってお経をあげたり、お菓子を食べたりして1日遊ぶ。私の子供の頃は、町内ごとに中学生から小学生までがひとつのグループになって分担作業した。賽銭を集めに家々を回る役、そのお金でお供えの果物やお菓子を買いにいく役、そして最後にはみんなで分け合う。一種の会社ごっこであった。地蔵盆が終わった夜は年長者の家にみんなが寄せてもらい、食事をしたりトランプや花札をしたりして遅くまで遊んだ。この日は、子供たちだけで夜更かしすることが許され、ちょっと大人になったような、そんな記憶が残っている。写真は山代温泉の「女生水」の地蔵盆。

(2006.9 M.O)

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