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vol.37 『いつ訪ねても四季がある、人がいる「やまなか」』

加賀温泉郷の中では最も山あいに位置する山中温泉。景勝「鶴仙渓」の渓谷美で知られるが、開湯1200年の歴史、山中漆器、そして民謡山中節と、自然と伝統文化が凝縮している町である。近年、街なかに「ゆげ街道」が整備され、人気の散策スポットとして多くの観光客で賑わっている。加賀四温泉の中でも、「そぞろ歩き」ができる温泉街として一歩抜きん出ている感じだ。

 

このゆげ街道では折々にイベントが行なわれているが、その中でも人気なのが「六三郎鍋」。あの料理の鉄人、道場六三郎は山中町の出身。数年前より冬の期間、道場さんのレシピによる「カニ汁」を大鍋で振る舞っている。生姜が効いて、冷えた体がとても温まり、1時間ほどであっという間に売り切れになってしまう。この人気に応えて、昨年秋には「加賀じゃがポタージュ」を追加、そして今年の春には「加賀野菜スープ」を振る舞うことに決まった。

 

先日、山中温泉のとある会場に道場六三郎さんをお迎えして、春の「加賀野菜スープ」の試食会があった。仕立ては一般にいうクリームスープ、その隠し味に味噌とチーズを使っているそうだ。

ふと「料理の鉄人」の放送を思い起こした。イタリアンシェフとの対決で、テーマ食材は「チーズ」。和食の料理人には絶対不利な食材である。その時、六さんが繰り出した技が「鍋」であった。味噌仕立ての寄せ鍋にチーズをどんどん放り込んでいく。スタジオの審査員も、テレビを見ているこちらもその光景にビックリ。勝敗は、道場さんの完勝だった。決戦後のインタビューで、「まぁ、チーズはアンキモみたいなもんやからね」と笑顔であっさりと言った。対戦相手のシェフは「いい匂いがするので、隣を見たら驚いた。もうそれからは、気が動転して」と完敗の弁。まさに「当意即妙」、道場マジックが全国を仰天させた瞬間だった。今でもその時の強烈な印象が残っている。

 

春から供される「加賀野菜スープ」は、番組で登場した鍋とは違い、一般に食べやすく仕立てられているからご安心を。試食会場で道場さんは、「4月からの本番には、菜の花など春らしいものが欲しいね」と指導。続けて「夏にはトマトを使った冷生スープはどうか」と、次への期待を膨らませてくれた。

これで四季を通じ、気軽に道場六三郎の味が楽しめることとなった。一杯100円で、毎朝10時から11時半まで。なんと毎日である。観光協会の企画力もさることながら、現場での仕込みから、お客様へのサービスまでを一手にまかなう「かあちゃんの会」のお母さん達の下支えがあってこそだと思う。

 

その夜は、山中座で「山中節道中流しと日本海民謡」という催しも行なわれた。本條秀太郎作の山中節道中流しに始まり、西音内盆踊り、おわら風の盆の競演が繰り広げられた。二つの偉大な先輩のように、山中節道中流しも自分達の手でじっくりと育てていこうとしている。

「まず観光ありき」ではなく、「地元住民が楽しむ」ことをすべての原点に、時を積み重ねていく。そのことが一番大切なのだと、座談会のリーダー達はみな口をそろえた。

商店主、婦人会、旅館の女将さん、若旦那、はては漆職人まで、様々な職業、年齢を超えてイベントを支えている。「やまなかのためなら」と、旅館も商店も、勤め人も、共通のミッションで協力し合う。これが他の温泉ではちょっと真似できない「やまなか」の強さである。

(2007.2 M.O)

 

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