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TOP > 加賀四湯紀行 > 歳時記 > vol.42-1 『2007夏。にぎわいと避衆と』vol.42-1 『2007夏。にぎわいと避衆と』
毎年のことだが8月はほんとうに慌ただしい。
夏休みの家族旅行や帰省と、旅まちネットの窓口には連日多くのお客様がお見えになる。
加えて今年の酷暑。晴天を通り越して朝から刺すような日差し、日中の炎天下はとても立っていられない。息ができないといった感じだろうか。そんな天候も、気ぜわしさを倍加させた。
地元の温泉街では恒例の夏まつりが連日連夜開催された。山中温泉に見習えと、山代温泉や片山津温泉でも趣向を凝らした催しや夜店がならび、年を追うごとにお客様が増えているようだ。三つの温泉地、町民の気質の違いが会場の雰囲気にも表われるのが不思議で、それぞれ個性があって面白い。それにしても毎晩汗だくになりながら係員をする地元の商店や観光協会の熱意には頭が下がる。
家から海までは20分ほどと近いので、毎年一回は家族で海水浴に出かけるのだが、今年は焼けた砂浜を想像するだけで海へはとても行く気にならなかった。かといってプールではいかにも味気ない。そこで思いついたのが川行きだ。そうそう、夏休みの初めに小学生の自然体験塾で訪れた河原があった。
山村の暮らしがまだまだ残っている東谷地区、谷あいを流れる動橋川(いぶりはしがわ)は、護岸のない自然のままの姿をしている貴重な川だ。その動橋川で伝統漁の「ざんざらこ」を子供たちとともに体験した。追い込み漁の一種で、荒縄の両端に河原の石を結び付け、数十人が縄を手に持って横一列になり、川底に石を擦り付けながら川下から追い込んでいく。「ざんざらこ」とは、石と石とのこすれ合う音からきたのだろうか。ねらうのは清流に棲む「ごり(鮴)」。足元をよく見ると小さいごりがチョロチョロと泳いでいるのが見える。掛け声とともに、石を下げた腕を左右に振りながら徐々に輪を小さくして、最後に網ですくい上げる。
「わーっ、すごい、いっぱい!」子供たちの歓声が上がった。想像していた以上に大漁で、たらい一杯分は取れただろうか。
大日山水系にある2本の川、もう一方の大聖寺川へは、子供の頃によく泳ぎに行った。ごり用の小さなヤス(魚突き)で、石の下に隠れているごりを捕った。口から割り箸を突っ込んで、火を焚きその場で焼いて食べた。運よく鮎や山女を突いたりすると、そっと隠して持って帰った記憶がある(子供は鑑札がないので、でも時効です)。そのときのごりに比べると、「ざんざらこ」のごりはとても小さかったが、地元では佃煮にするのでちょうどよいのだろう。もう永らく川遊びの楽しさを忘れていたけれど、子供の頃の光景が鮮明に蘇ってきた。
動橋川の上流はいい。
家族を連れて行った河原は、いままで全く知らなかった場所だ。木陰もあるし、瀬もある、泳げる瀞(とろ)もある。地元のばあちゃんが日なが涼みに来て、新聞を読んだり寝転がったりしている。のどかで、何より静かだ。
水はとてもきれいだが冷たい。オロロ(小型のアブを加賀ではこう呼ぶ)が寄ってくるのが上流の痛いところだが、来年も必ず遊びに来よう。
山代温泉から車でわずか10分のところに、自然豊かな日本の原風景がある。おとぎ話に出てくるような民家と、年老いても心豊かにゆったりと暮らす人々が住んでいる。
内緒にしたい秘密の避衆地。もし来年まで覚えている人がいたら、その時に尋ねてください。そっと教えましょう。
(2007.8 M.O)