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加賀市獅子舞。127町で受け継がれる獅子舞の魅力とは?

お祭りやお正月など、目にする機会が多い獅子舞。加賀市でも多くの町に残されており、厄払いや無病息災、五穀豊穣、漁村であれば大漁祈願など、その土地その土地に根付いて連綿と受け継がれています。今回は、日本全国300件以上の獅子舞を取材してきた稲村さんに「加賀市獅子舞」を紹介していただきます。
加賀市獅子舞。127町で受け継がれる獅子舞の魅力とは?

獅子舞が住みやすい町、加賀市

獅子舞というと、どのような姿を思い浮かべますか?お正月に頭を噛まれた経験のある方も多いかもしれません。加賀市では獅子舞が各町で受け継がれており、獅子舞がとても盛んです。2022年の調べでは、127町で獅子舞に使われる獅子頭が確認されました。この数字は驚異的であり、1つの自治体が100を超える獅子舞を継承している自治体はとても珍しいことです。

多様な獅子舞の宝庫

  • 127町の獅子頭

加賀市には農村、漁村、宿場町、城下町、温泉地、山村と多様な街並みがあります。農村なら五穀豊穣、漁村なら大漁祈願という風に、祈りの形もさまざまです。それとともに、獅子舞の舞い方や獅子頭のデザインも1つとして同じものがなく、それぞれに個性があります。

伝来経路は日本全国から

  • この獅子頭は加賀市内で最も古い江戸時代後期制作で、大聖寺菅生郵便局にて展示(大聖寺菅生町)
  • 京都の獅子舞を地域の子どもに習わせたいということで作られた手作り獅子頭(森町)

加賀市の獅子舞は、日本全国から伝わりました。北前船によって九州から、あるいは北国街道を通って伊勢・京都・江戸から、工場に働きに来た労働者によって長野から、また富山県や石川県内などの近隣からも伝えられました。獅子舞文化の多様性は、加賀市に集った人々の多様性でもあります。

大聖寺は獅子舞だらけの城下町

  • 家を一軒一軒回る獅子舞の様子(大聖寺中町)
  • 加賀神明宮の境内に咲く桜と馬
  • 美術館の催しで演舞(大聖寺関栄)
  • 親子獅子によるお座敷の舞い(大聖寺関栄)

大聖寺地区は、加賀市の中でも最も古く獅子舞が伝来した地区とも言われています。城下町である大聖寺は町割が細かく、十数軒で1つの獅子舞を持つ場合もあります。人口あたりの獅子舞の密度を考えると、日本有数の獅子舞が盛んな地域の1つと言えるでしょう。大聖寺地区では毎年4月第2土日に開催される「大聖寺桜まつり」で、各町の獅子舞が披露されます。地域を散歩していると、色々な街角で獅子舞に遭遇します。


<大聖寺桜まつりの獅子舞>

大聖寺越前三ツ屋町

大聖寺京町

大聖寺下屋敷町

大聖寺関栄

大聖寺中町

大聖寺錦町

大聖寺福田町

大聖寺本町

大聖寺南町

大聖寺弓町

温泉と合わせて楽しめる獅子舞

  • 総湯前で舞う獅子(山中温泉)
  • 総湯前での演舞(山中温泉)
  • 頭を噛む獅子(山中温泉)
  • 激しく回転する獅子舞(潮津町)
  • 子どもに襲いかかろうとする獅子舞(潮津町)
  • ひょっとこが登場する獅子舞(潮津町)
  • 春と夏に行われる獅子舞(潮津町)
  • 公民館に保管されている獅子頭をはじめとした祭り道具(山代温泉20区)
  • 子どもが参加する獅子舞(片山津温泉6区)
  • 子どもたちが大活躍の獅子舞(片山津温泉6区)

加賀市の3つの温泉地でも獅子舞が盛んです。温泉地では、山中温泉のこいこい祭り、山代温泉の八朔祭、片山津温泉の湯のまつりなどがあります。これらは温泉と一緒に楽しめる獅子舞です。


山中温泉では、祭りの日以外でもさまざまな獅子舞文化が見られます。この地域は山中漆器が有名で漆の技術があるので、獅子頭の制作が盛んです。温泉街のお店を覗くと、飾り用の獅子頭が売られているのを見かけます。また、総湯(共同浴場)では毎週末に女性が舞う「獅子踊り」が披露されます。女性が踊る獅子は、日本全国を見てもなかなかありません。また、「獅子の里」という名前のお酒も販売されています。


<温泉街のお祭り>

・片山津温泉:8月第3土日 湯のまつり(片山津温泉1区, 5区, 6区で実施)

・山代温泉:9月1日 八朔祭  

・山中温泉:9月下旬の2日間 こいこい祭り

コラム

本物そっくり!獅子頭のガチャ登場。

山中温泉の「湯の本町商店街」で、カプセルトイ販売機が人気となっている。

カプセルの中に入っているのは、なんと山中漆器でつくられた獅子頭のフィギュア。毎年9月に山中温泉で開催される「山中温泉こいこい祭」の名物である黒い大獅子や金獅子、赤獅子などの5種類。手のひらサイズで再現されている獅子頭は、口が開くようになっており、小さいながらも本物さながらのリアル感が漂うクオリティ。どの獅子頭が出るか、一度トライしてみては!


設置場所:「肉の寿々㐂」「手作り餃子 長楽」 

料金:1回 500円

本物そっくり!獅子頭のガチャ登場。

海の獅子は荒々しい

  • 橋立3町の獅子舞は港で演舞する
  • 港で舞う獅子舞(田尻町)
  • 公民館で舞う獅子(田尻町)
  • 公民館での締めくくりの演舞(田尻町)
  • 勇壮な獅子舞(橋立町)
  • 獅子殺しの演舞(伊切町)
  • 猛ダッシュする獅子舞(塩屋町)
  • 大きな神輿をかつぐ(塩屋町)
  • オスメスの巨大な神輿が登場!(塩屋町)
  • 引きずられる獅子舞(塩浜町)

激しくて勇壮な獅子舞を感じたいなら、海側の獅子舞がおすすめです。特に、巨大な白い獅子頭を持ち、大勢で獅子を演じる橋立3町(田尻町、橋立町、小塩町)の獅子舞は、獅子を退治して大漁祈願を願う「獅子殺し」という特徴があります。また、塩屋町の揚げ獅子は担い手が神社への参道を猛ダッシュする舞が見られ、塩浜町では獅子が神社の参道を引きずられるという舞が見られます。これらの獅子舞は毎年9月中旬に行われます。


<港町の獅子舞>

・田尻町

・橋立町

・小塩町

・塩屋町

・塩浜町

執筆・撮影

  • 筆者が撮影する様子(曽宇町)
  • 写真集『我らが守り神 石川県加賀市の獅子頭たち』(2021年)

<プロフィール>

稲村行真(加賀市獅子舞を応援する会 顧問)

1994年生まれ、千葉県在住。民俗芸能に関する執筆、研究、作品制作等を実施。日本全国300件以上の獅子舞を取材してきた。加賀市では2018年より獅子舞の調査活動を開始。127町で獅子頭の残存を確認し、その成果を写真集『我らが守り神 石川県加賀市の獅子頭たち』(2021年)やクリアファイルなどにまとめた。2023年1月に加賀市獅子舞を応援する会を発足。獅子舞文化の継承サポートやその発展に向けて、イベントなどの企画・運営なども行っている。


獅子舞の日程など、加賀市獅子舞についての詳しい情報は下記のInstagramまでお問合せください。

https://www.instagram.com/kagashishimai/